じっと見つめてくる少年に悦子は困ってしまう。
そんなに見つめられてしまっては、揺れている心がもっとグラグラになってしまう。
悦子が少年の歳を聞くと途端に少年の顔が下を向く。どうやら、メールで悦子を騙していた事にかなり罪悪感を感じているようだ。
(20の歳の差か…)
悦子は少年との歳の差を計算する。自分が36歳で彼が16歳。果たして、彼はそれで良いのだろうか…。
「文人くん…で、良いんだよね?登録名…」
「あっ、はい。本名です…」
一週間も出会い系でやり取りしていた男性がまさか、こんなにも可愛らしい少年であったなんて思いもしなかった。あんなにも慎重にやり取りをしていたのに…。だが、子供も居ない悦子にしてみれば本来関わる筈も無い年齢の男性である彼。ある意味では嬉しい誤算なのかもしれないと悦子は今にして思ってしまう。
ただ、しかし、彼の方はどうなのだろうか。彼は自分みたいな年増で、どう思っているのであろうか。悦子はふとそれが気になってしまう。
「あの…逆にキミは私なんかで良いのかな?こんな…こんな、歳のいったオバサンなんかで…」
「そんな、オバサンだなんて!?キレイです。美人です。可愛いです!!」
グイッと食い入る様に声を張り上げる少年。一瞬、悦子はドキリとしてしまう。いや、一瞬処では無い。もはや、とりとめ様もないほど悦子は心が揺れていた。こんな年端もいかない少年に、悦子はいままでに無いくらいのときめきを感じてしまっている。
じっと少年を見つめる悦子。背丈は自分よりやや低いだろうか…。16という事は、ついこの間まで中学生だったのだ。色白で華奢な体。異性である自分に見つめられて直ぐ様もじもじと手をこまねいてしまう様子。
(まだ、純情なんだ…)
今どきの子にしては純真過ぎる少年。しかし、それが反って悦子の心の欲望に火を着けてしまう。手を出してはイケない。イケないと分かっている筈なのに悦子は…
「じゃあ…オバサンと行く?」
彼を車という自らの檻の中へと誘ってしまうのであった。
~続く~