出会い系で知り合った16歳の少年。彼を助手席に乗せて悦子は車を走らせる。
夜の街には色とりどりのネオンが光っている。
だが、悦子たちが目指す場所はここでは無い。
街を抜けた人気も少ない田舎道。そして、さらに奥深く。
そんな場所にポツンと佇むまた色とりどりの光が灯る建物。
そこが悦子たち二人が目指す目的の場所だ。
悦子は周りに良く注意を払い素早く車を建物の中へと滑らせる。田舎にせよ何にせよ、こんな所、誰か知り合いに見られたら事である。相手は20も歳が離れた高校生。しかも、見た目はさらに輪をかけて中学生の様な少年なのだ。
「誰にも見られなかったわよね…?」
悦子は車を停め、ホテルの中に入ってもまだしきりに周りを気にしてしまう。それほど、緊張してしまっているのだ。
「はっ、はい…たぶん、大丈夫だと…思います…」
と、そんな悦子の隣には少年がやはり同じく緊張しながら歩いている。そんな少年の緊張している姿になんだか悦子はホッと安心してしまう。緊張している彼を逆に安心させなければいけないと思うのだ。そして、だんだんと悦子の心に余裕が伺えてくる。
「ねぇ、文人くん。部屋はどんなのが良いかな?」
悦子は少年にそう問い掛ける。どうやら、このホテルは大きな部屋からソファーだけが置かれている様な小さな部屋まで色々な部屋のディスプレイがあってそこから選ぶようになっている。
「えっ?あの…えっと…」
「やっぱり、ベッドがある方が良いよね?」
何の気なしに悦子はベッドのある部屋を指した。すると、突然少年が少し顔を俯ける。どうしたのと、悦子が少年の方に注目する。
「あの…悦子さんが…良いのなら…僕は…泊まる様な部屋でも…」
その瞬間、悦子の顔が火を吹いた様に真っ赤に染まる。何の気なしにベッドのある部屋と言ったつもりだったが、どうやら少年には一泊出来る様な部屋にしようと捉えられてしまったのだ。
悦子はあまりにも恥ずかしい状況に少年と同じく顔を真っ赤にしながら、下に俯けてフロントの方へと前払いのお金を払いに行く。
(そそそ、そんなつもりで言った訳では、なかったんだけど…)
しかし、ちゃっかり、一泊料金分のお金を払ってしまう悦子なのであった。
~続く~