この話は続きです。初めから読まれ方は「再会・・・」(その1)へ
帰りの電車に乗り込み三人並んで座りしばらくいろいろな話をしていたけれど、いつの間にか私は眠ってしまっていたようでした。
そんな私の耳に隣に座るIちゃんとその隣に座るMちゃんの会話が聞こえてきました。
M:「I、よかったの?せっかくのチャンスだったのに」
I:「だって・・・。でもこうして今日先輩と一緒に出かけることができたからそれでいいよ・・・」
M:「う~ん。こればっかりはあたしがどうこう言うことじゃないし、I自身の問題だもんねぇ」
半分意識が眠っている状態の私には会話の内容がよく理解できず、いつのまにか再び眠りに落ちていきました。
「先輩、もうすぐ駅に着きますよ」という声とともに体を揺り動かされ目を開けると、目の前でIちゃんが私の肩に両手をかけていました。立ち上がった状態で座っている私の肩に手を置こうとしたためどうしても前かがみ気味になり、大きく開いた大きく開いたワンピースの胸元からはIちゃんのブラと僅かな胸の膨らみがしっかりと見えてしまい、私は一気に目が覚め慌てて視線を逸らしました。
駅に降り立ち、暗くなりかけていたので彼女たちの家まで送っていきました。二人は幼馴染で同じマンションに住んでいました。マンションの入り口で「先輩、今日は受験勉強で忙しいのに本当にありがとうございました。すごく楽しかったです。」と言ってくれた二人と別れて帰りかけたときMちゃんが「あっ、先輩!」と駆けてきました。私が「どうしたの?」と聞くとMちゃんは「さっき電車の中でIから揺り動かされて起きた時、先輩の視線、しっかりとIの胸元にいってましたよねぇ」といたずらっぽい表情で笑いかけてきました。
そう、急いで視線を逸らしたつもりだったけれどMちゃんからはしっかりと見られてしまっていたのでした。私が「あっ、いや、それは・・・」と固まっているうちにMちゃんは「じゃあ、おつかれさまでした!」と身を翻してIちゃんのもとへと戻っていきました。恥ずかしさででいまだ固まったままの私の後方からIちゃんとMちゃんの会話が聞こえてきました。
I:「何話してきたの?」
M:「気になる?」
I:「そんな風にいわれたら余計気になるよ」
M:「しょうがないなぁ。えっとね、さっき駅に着く前に先輩の肩に手をかけて起こしてたでしょ。その時に・・・」
I:「ちょっとぉ!何ですぐ教えてくれなかったの!!」
M:「まぁいいじゃない。見られて減るようなものじゃないし」
I:「そういう問題じゃないよぉ!!」
突如、Iちゃんが私のもとに駆けてきて、顔を真っ赤にしながら「せ、先輩!電車の中でのことは忘れてくださいね!!思い出しちゃだめですからね!!」と一気にまくしたてるとMちゃんの待つマンションの入り口に戻っていきました。
しかし、そんな風に言われると余計に意識してしまい今までに見たIちゃんのショーツやブラ、そして胸の膨らみの事で頭がいっぱいになりその日の夜は勉強に身が入らず、私の手は無意識のうちに下半身へと伸びていました。
その後は、お正月に年賀状が来たもののIちゃんと顔をあわせる機会はほとんどなく、早いもので気がつけば卒業の季節になっていました。ちなみに私は無事に公立の普通高校に進学する事ができました。
卒業式終了後、IちゃんとMちゃんがが小さな花束を持って私のところにやってきました。しばらく会わないうちに成長していて入学当初の幼さも抜けなんだか少し大人っぽくなった二人から「高校合格と卒業おめでとうございます!」と花束と祝福の言葉を受けました。「ありがと。それにしても二人ともしばらく見ないうちになんだか大人っぽくなったみたいだね」と私が言うとMちゃんが「そうですよ。私たちも日々成長してますから。I、少し胸大きくなったもんね」と冗談めかして言うとIちゃんは「少しって、失礼な!私だって・・・って、先輩の前で普通にそういう話しないでよぉ。喋っちゃうとこだったじゃない!あっ、先輩も今想像したでしょ!!」といつものように顔を真っ赤にしていました。
そんな二人の変わらない騒がしくも暖かい祝福を受けながらIちゃんと出逢い過ごした学び舎を後にしたのでした。
高校生活には特に不満もなく毎日を過ごしていたけれど、Iちゃんたちと過ごした賑やかで笑顔に溢れていた日々と比べるとなんとも味気ないものでした。Iちゃんは私と同じ高校に行きたかったけれど、親の賛成が得られず公立の女子高に進学したとのことでした。もしかしたらまたIちゃんと会えるかもしれないと淡い期待を抱いていただけに残念でした。
高校三年になって今更ながら自分はIちゃんが好きなんだという気持ちに気づき、中学三年のあの夏の日東京の楽器店に誘ってくれた時のIちゃんの気持ちやMちゃんが席をはずしてくれたあの時私に告白しようとしてくれていたという事に気づき「何であの時気づけなかったんだろう・・・」とやりきれない後悔の念でいっぱいになりました・・・。
かと言って今更Iちゃんに連絡を取る勇気もなく「かわいいIちゃんのことだから高校生になった今ではきっと彼氏もいるだろうしな・・・」とIちゃんとの思い出は胸の奥にしまう事にしました。
つづく
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