「再会・・・」   (その3)

時刻(time):2022-01-29 10:04源泉(Origin):net 著者(author):admin
この話は続きです。初めから読まれ方は「再会・・・」(その1) へ ・・・・・・ 賑やかな拍手の音に我に返るとちょうど二人の自己紹介が終わったところでした。 練習が再開さ

この話は続きです。初めから読まれ方は「再会・・・」(その1)へ

・・・・・・
賑やかな拍手の音に我に返るとちょうど二人の自己紹介が終わったところでした。
練習が再開され、初見の楽譜だったけれども二人ともとりあえず合奏に参加する事になりました。
まさか今になってIちゃんと再会できるとは思っていなかったし、ついさっきまでIちゃんと過ごしたときのことを思い出していたところにIちゃんが私の隣で吹く事になったので、年甲斐もなくドキドキしてしまい頭の中が真っ白になってしまいました。

楽譜がまだないIちゃんは私の楽譜を一緒に見る事に。
Iちゃんは周囲の団員に
「よろしくお願いします」
と挨拶をしながら私の隣にやってきて
「先輩、お久しぶりです」
とちょっとはにかみながら微笑み椅子に座りました。
十年ぶりに間近で見たIちゃんは、昔のかわいらしい面影を残しつつもすっかり大人の女性になっていて座ったときに甘くやわらかな香りがしました。
ほとんど会話をするまもなく合奏が再開されたけれど、隣にいるIちゃんのことが気になってしまい上の空状態で気がつけば練習終了の時間になっていました。

楽器を片付けていると
「先輩、改めましてお久しぶりです!」
とIちゃんとMちゃんがやってきました。
「ホント久しぶりだよね。中学のとき以来だから十年ぶりかな」
と私が言うとMちゃんが
「ですねぇ。先輩、私たちすっかり大人の女性でしょ?」
と相変わらずのノリで答えてきました。
そんなMちゃんを笑いながら見ていたIちゃんが
「先輩、もしよかったらこの後軽くお茶していきませんか?」
と言ってきました。
そんなIちゃんが中学三年のあの夏の日東京の楽器店に誘ってくれた時の姿と重なり一瞬ドキッとしてしまいました。
IちゃんとMちゃんは今年の春に同じ大学を卒業し、二人とも都内の同じ百貨店に就職したとのことでした。
「ここまでくるとホント腐れ縁ってヤツだよねぇ」
と明るく笑いあう彼女たちの笑顔は十年前のあの笑顔のままで、心が乾ききっていた生活を送っていた私の心に染み入りました。
話は尽きないものの三人とも次の日は仕事ということで今日のところはこれまでにして、それぞれの電話番号やアドレスを交換し都合をあわせ今度ご飯を食べに行くということにしました。
彼女たちも私も実家に住んでいて住所も変わっていなかったので久しぶりに二人をマンションまで送り帰途に着きました。
家に帰り楽器や荷物を置いて一息ついていたところに携帯に一件のメールが届きました。
送り主はIちゃんでした。
「今日は久しぶりに先輩にあえてすごく嬉しかったです。今度ご飯を食べに行くの楽しみにしてますね。おやすみなさい・・・」
と・・・。
私は
「もしかしてIちゃん・・・」
と一瞬思ったけど
「そんなわけないよな、久しぶりに会えたからめーるしてきただけだよな・・・」
と淡い期待を打ち消し返信をして眠りにつきました。

つづく
「再会…」(その4)へ

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