この話は続きです。はじめから読まれる方は「美優夫人の飼い犬」へ
「870!」
「870の声が掛かりました。他にいらっしゃいませんか?」
「1.000!」
会場内にざわめきが起こると,声を上げた男女にクローズアップされた。
口元に髭を蓄えた初老の男と年齢的に不釣り合いな中年と呼ぶにはまだ若い気がする30代初めの女だった。
「止めろ~!放せ~!」
両脇を男達に抱えられた先ほど足蹴にされた男が脚をバタバタと暴れながら会場に連れ出されてきた。
背後から女が鞭を振るい男の背中を打つと衝撃で前に倒れるのを両脇の男達が抱えたのだった。
「躾が不十分で申し訳ありません。こちらの調教不足で皆さまにはお見苦しいところをお見せしました。ご落札いただきましたせめてものお詫びとしまして,こちらの負担にて竿を残して去勢手術をさせていただこうと思います。そうすればこの元気いっぱいのオス犬も少しは大人しくなるかと思うのと,奥さまがお遊びの時も妊娠の心配なくなるかと思います。」
女の響く声に会場内に失笑が漏れた。
「嫌だ~離せ!」
一際男が騒ぐと両脇から抱え出された。
「嫌だ~!」
断末魔の様に叫び声がいつまでも響くのを会場の者達は顔を見合わせて笑っていたのだった。
狂っている‥
中年の夫人が煙草をふかしながら何事もなかった様に隣の男と話す様が‥
女同士のカップルがキスをしながら次のオークションの出品表を見て,囁き合う様が‥