援助交際なんて今どきの娘なら誰だってやってる。だから、弓子は悪びれもせずに毎週のように援助交際をやっている。
「最低ぇ4かぁ~5ぉ~、出せる人じゃないと、ちょっとむりかも~」
青少年に対する保護法は年々厳しさを増して制定されてゆく。しかし、子供たちはこの弓子のように自らその法をくぐって冷たく暗い輪の中に入って行くのだから、その意味と在り方に対して法の制定者たちはどこか間違いを犯しているのだろう。
「てか、ホ別の意味わかってる~?こっちも慈善事業でやってるわけじゃねぇーしさ~」
弓子たちのような娘にとって援助交際とは割りの良いアルバイトであって、売春とか性犯罪とかそんな次元の話では無い。
それが、当たり前で標準。トイレは流して、扉は開ける。テレビはカラーで大人はうるさい。はっきり言って、しない、知らないは非常識。彼女たちにとって出会い系とはハローワークなのだ。
(うぅわぁっ!ハズレかも…)
今回の相手は最悪な部類だ、と弓子は内心げんなりする。
駅前通りの銅像前で待ち合わせしていた援助交際の相手はだっさいスーツと黒ぶちメガネの地味なおっさん。30才ぐらいだと電話で言っていたが、見た目は40代。ただ、意外と体つきはスラッと背が高めで、弓子が嫌いな脂肪の腹が出ているオヤジでないという所が唯一の幸運点であろう。
「あ…ゆ、弓子ちゃん?」
男が弓子に気付く。ポニーテール、一応の名門校・音環女子の制服と右手にはめたグリーンのブレスレットが決め手で男は弓子を出会い系でGETした援交相手であることを見い出した。
「あぁ~、増岡さん…だっけ?」
弓子も増岡の胸元を見て再度、この男が今回の援交相手であることを確認する。弓子が確認した増岡の右の胸元には真っ赤な薔薇が一本結い付けられている。
増岡が目印にそうして来るよう前もって言っておいたのだ。
(マジだよ。マジで胸に薔薇付けてやんの。昭和かって感じ…)
今どきにも無いキザッタらしい時代遅れの目印に弓子は、ますます増岡に対して嫌悪感を抱く。
(こんなのさっさと終わらせよーっ…)
いつもなら猫なで声でオヤジたちに媚びを売る弓子だが、今回だけはどうにもそんな気にはならなかった。
「会えたんだし、早くホテル行こう。私、そんなに時間無いし」
これも、本当だったら普段はご飯やら何やらと基本料金別でタカるのだが、やはり、弓子は気が乗らないのかメインであるセッ○スを優勢する。