私の名前は山崎利奈。
中学2年の時、担任の体育教師から半年間悪戯されていた。
いかにも体育教師然とした筋肉質の体つき、スポーツ刈りの頭に、女子供から怖がられるような厳めしい顔の男だった。
私は初めからこの男が嫌いだった。
いつも私を舐めるように見ているような気がしたし、体育の時間などは「山崎、手の動きはもっとこうだ」などと言いながら、しばしば体に触れてきたので嫌だった。
そのせいで、夏頃にはすっかり体育の授業をさぼるようになっていた。
折しもプールの授業という季節だったため、泳ぎがあまり得意ではない私は結局1度も授業に出ないまま終わった。
そんなある日、その体育教師から放課後呼び出しを受けた。
何を言われるのか想像がついていた私は、そいつのいる体育教官室へ行くのが憂鬱でたまらなかった。
が、さすがにすっぽかすわけにもいかず、重い足取りでその場所へ向かった。
体育教官室は校舎とは離れた所にあったため、面倒な気持ちに拍車がかかる。
「失礼します」
やる気の感じられない様子で、私は室内に足を踏み入れた。
「おう、来たな山崎入れ」
中にはその体育教師しからおらず、嫌ぁな空気が漂っていた。
「どうして呼び出されたか分かるか?」
「…」
「黙ってちゃ分かんないだろ」
「プール…ですか」
私は目をそらしながらしぶしぶ答えた。
教師はそんな私の様子をまた舐めるように見ていたが、ニヤッと笑い
「お前そんな態度でいいと思ってんのか?俺は知ってるんだぞお前の秘密を」
と言った。
私は嫌な予感でいっぱいになった。
「…何ですか、秘密って…」
心臓が冷たく鳴っている。
「お前こないだの放課後教室で」
背筋がすうっと冷たくなった。
この男は何を言おうとしているのだろう。
「クラスの吉野の鞄だの机だの勝手に覗いてたろ」
一瞬時が止まり、再び動き出した時に私は真っ青になっていた。
「証拠もあるんだぞ」
教師は自分の携帯をカチカチといじると、写真を私の目の前にかざした。
そこには、クラスメイトの鞄の中身を盗み見ている私の姿がしっかり写っていた。
地面がぐらりとした。
「山崎お前吉川のこと好きなんだろ。ほらこっちの写真には、お前が吉川の携帯勝手に見てるのが写ってるぞ」
「先生…」
「ん?なんだ山崎」
私は必死の気持ちでこう言った。
「…お願いします!吉川くんにはこのこと言わないで下さい。お願いします。授業のこともすみませんでした!」