この話は続きです。はじめから読まれる方は「美優夫人の飼い犬」へ
「去勢済みの大人しい犬を2匹連れてきなさい。」
女がインターホンで告げた。
女と入ったのは落ち着いたバーの様な部屋だった。
磨き込まれた無垢材の床に真っ白なカーペットが敷かれ,壁の棚には高級な銘柄の酒が並んでいた。
小さなテーブルを囲む様にコの字型にソファーが並び女の隣に座らされた。
「坊やも何か飲もうか。」
女が立ってグラスに氷を入れて話しかけた。
「ママ‥」
「大丈夫よ。怖がりさんなんだから。」
反対の壁に吊られたガラスケースの中に飾ってある何本もの鞭や拘束具が普通のバーとは明らかに違っていた。
「どうしたの?坊や‥」
グラスに注ぎながら女が隣に座り,一つのグラスを渡してくれた。
「乾杯しようか。可愛い坊やとママの一つになれた記念日に。」
「ママ‥」
グラスを合わせた時,スーツを着た屈強な男が顔を出して,僕を見ると一瞬驚いた表情をした。
「小島,私の可愛い坊やよ。ご挨拶なさい!」
男が慇懃に頭を下げると
「ママの召使いだから大丈夫よ。怖くないからね。」
人前ではさすがに「ママ」と呼ぶ事ができなかった。
ただ答える様に女の手を握った。
男にリードを引かれて入ってきたのは,想像していた通り,二人の‥二匹の捕らわれの男だった。