いつもの週末のように、妻の洋子のスーパーでの買い物について行った時のことだった。
「山本さん、こんにちは。お元気?」
ピクッとして妻が振り向いた。
「あっ、奥様・・・はい」
とても緊張した様子で返事をしている。
声をかけた相手は50前後の大柄の女性だった。
「また家に寄ってね。待ってるわ。」
「はい・・・ありがとうございます。」
妻は顔をなぜか赤らめて、もじもじした様子で返していた。
「だれだい?」
「同じマンションの人で、野村さんていうの。ときどきお家にお邪魔して、おしゃべりしてるの。」
「なんか緊張してたみたいだけど」
「ううん、なんでもない・・・」
帰り道、妻はなぜか困ったような様子をみせていた。
2年前に結婚した妻の洋子は28歳で、以前勤めていた会社は辞め、いまは週3日だけ、パートとして働きに出ている。平日も少し時間ができ、近所の奥さんたちの中にも知り合いができたと喜んでいた。スーパーで会った野村という女性もその内の一人だと思ったが、今日の妻の様子は気になってしかたがなかった。
「あなた、今度の土曜日はゴルフでしょ?」
「うん」
「あの・・、野村さん・・、この前スーパーで会った人・・、覚えてる?」
妻はもじもじしながら聞いてきた。
「ああ、ちょっと大柄の」
「ええ・・、野村さんが・・、土曜日に家に来たいって言ってるんだけど・・、いい?」
「いいよ、お前も野村さんのお宅に行ってるって言ってたもんな」
「2時から2時間くらいだから、夕食の準備は大丈夫だし・・」
「いいよ、おれも遊んでくるんだし」
「ありがとう・・」
妻はほっとしたような様子を浮かべた。