結婚して10年経ち、私達はどうしても子供が授かれませんでした。子作りを始めて3年目に、夫婦そろって検査したところ、不妊の理由は私でした。精液の中の精子の量が少なく、ギリギリ自然に受精出来るかどうかという境界にいるようでした。
ただ、まだ若かった事もあり、そのうち授かれると思い、不妊治療はせずに基礎体温を取ってセックスをするというようなやり方で子作りをしました。
結果、それから7年経っても授かれませんでした。そして、不妊治療を本格的に始めようとしてもう一度検査をすると、私の精子の量は絶望的なほど少なくなっていました。
そして、人工授精も難しいというような精子の状態で、難しいと判断せざるを得ないほどの状態でした。
『仕方ないよ。別に、子供がいなくても2人で楽しく過ごしていけるでしょ?』
と、嫁の久美子は言ってくれました。でも、久美子が本当に子供が大好きで、自分の子供が欲しくて仕方ないのを知っている私は、ただうなだれて謝る事しか出来ませんでした。
そんなある日、私の兄から電話がありました。息子の悠斗君が受験で上京するので、1週間ほど泊まらせてくれというお願いでした。いくつか大学を受験するそうです。私は、喜んで受け入れると言いました。
悠斗君の事は生まれたときから知っていますし、小さな頃から本当によく遊びました。彼も私に良くなついてくれていたと思います。ただ、兄が仕事の関係で大阪に引っ越してしまったので、ここ3年ほどあまり会う機会はありませんでした。
電話が終わった後で、久美子には少し言いづらいなと感じました。私と違い、兄には子供が2人います。同じ兄弟でも、まったく違います……。そして、その子供を滞在させるというのは、久美子にとっては辛いのではないかな? と、今さら思いました。
でも、話してみると久美子は喜んでくれました。内心はわかりませんが、表面上はとても喜んでくれました。
『悠斗君、もう大学受験なんだね。ついこの間までランドセルしょってたのにね。』
懐かしそうに言う久美子。確かに、あっという間でした。そして、悠斗君が滞在する日もあっという間に訪れました。
「浩介おじさん、お世話になります!」
元気よく挨拶をする悠斗君。しばらく見ない間に、すっかりと大人になった感じがします。身長も175cm位はありそうですし、顔つきもすっかりと大人びたように思えます。
『久しぶりだね。受験、頑張りなよ〜。美味しいご飯、いっぱい作るからね!』
久美子は、嬉しそうでした。でも、私は泣きそうな気持ちになってしまいました。本当は、こんな風に自分の子供に色々としてやりたいと思っているはずです。私が種なしなばっかりに、久美子には悲しい思いをさせているんだろうなと思うと、ついつい感傷的になってしまいます。
そして、3人での生活が始まりました。それは、新鮮で楽しいものでした。悠斗君は、ほがらかで礼儀正しく、好青年に成長していました。
『悠斗君、どうして東京で受験するの?』
久美子が、大阪で受験しない理由を聞きました。
「一人暮らししたいんです。それに、東京なら叔父さんも叔母さんもいるから、安心かなぁって……」
人なつっこい笑みを浮かべて言う悠斗君。私は、頼られて悪い気持ちはしませんでした。
そしてその夜、ベッドの上で久美子が、
『悠斗君、本当に大きくなったね。それに、良い男に育ってるね』
と、嬉しそうに言いました。でも、気のせいかも知れませんが、どこか寂しそうに思えました。私は、うんとしか言えませんでした……。
そして、子供がいるような楽しい時間が過ごせましたが、あっという間に1週間は過ぎ、悠斗君が帰る日になりました。私達は、本当に寂しいなと思ってしまいましたが、
「じゃあ、4月にまた来ます!」
と、悠斗君は自信たっぷりに言いました。難関校の法学部が第一希望のようですが、彼には自信があるようでした。実際、彼は第一希望に合格し、4月から東京に暮らすことが決まりました。
さすがにウチで生活するということはなく、1Kのアパートに暮らすことになりましたが、ウチから徒歩で15分くらいの近所でした。わざわざ、ウチに近い物件を探したようです。
久美子は、目に見えて上機嫌になりました。そして、彼の新生活が始まりました。夕ご飯をウチに食べに来ることが多く、そして久美子も週に一回くらいは洗濯をしてあげたりするようになりました。悠斗君から合い鍵も預かりました。
『でも、彼女が出来たら終了よ。彼女さんにやってもらわないと』
と、久美子は言います。
「いやぁ……。しばらく出来そうもないです」
と、頭をボリボリかきながら悠斗君は言いました。
私は、こんな生活が半年ほど続いた頃、ある思いを強くしていました。それは、悠斗君に久美子を妊娠させてもらいたいという思いでした。遺伝子的には、全くの他人ではありません。しかも、血液型も同じです。それに、彼の遺伝子なら文句はあるはずもないです。
でも、そんな事はとても言い出せず、迷う日々でした。そんなある日、たまたま昼間に、悠斗君とばったり街中で出会いました。そして、昼ご飯を食べる事になったのですが、久美子なしで2人で食事をするのはとても久しぶりでした。
「彼女はまだ出来ないの?」
私の質問に、少し恥ずかしそうにしながら、
「はい。なかなか良い子がいなくて」
と、答える悠斗君。
「どんな子がタイプなの?」
私がそれとなく聞くと、
「そうですね……。落ち着いた感じの子が好きです」
悠斗君はそんな風に言います。
「そっか。見た目とかはどんな感じが好きなの?」
「えっと……。久美子叔母さんみたいな感じの人かな?」
と、照れながら答える彼。私は、もしかして私の考えが実現するのでは? と、少し興奮してしまいました。
「あんなおばちゃん、守備範囲外でしょ?」
私が軽い調子で聞くと、
「そんな事ないです! 叔母さん、凄く綺麗だし、優しいし」
と、力説する彼。私は、もしかして本気なのかな? と、嬉しくなってしまいました。
そして、周りを気にしながら小声で聞いてみました。久美子とセックスをするつもりはないかと……。
「えっ!? また、冗談ばっかり」
当然、本気にしない彼。私は、これまでの不妊治療の事を話し、本気だという事を告げました。これを話す事で、関係が壊れてしまうかもしれない……そう思いましたが、色々な面で追い詰められていた私は、この方法しかないと思ってしまっていました。
「……そうだったんですね。子供、作らない考えなのかなって思ってました……。僕、無神経でしたね……」
悠斗君は、自分の存在そのものが、久美子にとってはプレッシャーになっていた事を瞬時に理解したようです。さすがに法学部に合格するだけあって、頭の出来が違うのかな? と、感心してしまいました。
私はそんな事はないという事と、悠斗君の存在が、ある意味では久美子の救いだったとも言いました。
「でも、良いんですか? 叔父さんは、久美子さんがその……僕に……」
顔を真っ赤にしてもごもご言う彼。私は、彼はイヤではないんだなと感じました。そして、悠斗君だから頼めるんだよという事を説明しました。
「……わかりました。でも、僕経験ないから、上手く出来るかどうか……。でも、頑張ります」
悠斗君は、恥ずかしそうに言います。
「大丈夫、久美子が教えてくれるから」
と、私が言うと、悠斗君は安心したように少し笑顔になりました。
そして、その夜、私は久美子に悠斗君とのことを話しました。
『な、なに言ってるの? 冗談?』
久美子は、本当にびっくりした顔で言いました。その後、2時間話し合いをしました。その結果、久美子は迷いながら同意してくれました。ただし、私もしくは久美子がイヤだと感じたら、すぐに中止するという約束で。
そして、私は久美子の気が変わってしまうのが怖くて、すぐに行動に移りました。二日後、悠斗君が家に来ました。いつもニコニコしている彼が、凄く緊張しているのがわかります。
「こんにちは。今日は、その……よろしくお願いします……」
いつもとはまったく違う様子の彼に、久美子は吹き出して笑いました。さっきまで、久美子も緊張して硬い表情でしたが、一気に緊張がほぐれたようです。
『そんなに緊張しないの。私だって緊張してたんだから』
すっかりとリラックスした様子の久美子。私は、自分で言い出した事ながら、実際に事が始まりそうになると腰が引けてしまいました。
「は、はい。わかりました。頑張ります!」
力強く言う彼に、久美子ははまた吹き出しました。
『頑張るものじゃないわよ。大丈夫、取った食べたりしないから』
そう言って、久美子は悠斗君にシャワーを浴びてくるように言いました。彼は、言われるままにシャワーを浴びに行きます。
『あなたはどうするの? 悠斗君が頑張るところ、見るの?』
久美子は、イタズラっぽい笑みを浮かべて言いました。緊張が解けて、少しハイになっているようです。私は、リビングで待っていると言いました。正直、気になる気持ちはあります。でも、まさか見るわけにもいかないですし、見てしまったら、それこそトラウマになりそうです。
そして、私はリビングへ、久美子は寝室へと移動しました。しばらくすると、浴室の方で物音がし、廊下を歩く音がします。すぐに寝室のドアが開いて閉る音がしました。私は、寝室の中に2人がいると思うと、今さら後悔を始めてしまいました。いくら子供が欲しいからと言って、とんでもない選択をしてしまったのではないか? そんな後悔が大きくなります。
私は、どうしていいのかわからず、ただ座っていました。でも、物音を立てないようにして、耳をそばだてるような感じでした。とくに話し声も何も聞こえません。
今、2人は何をしているのだろう? 想像ばかりが大きくなります。たっぷりと30分くらいはそのまま何も起きずにすぎていきました。
すると、かすかにですが、久美子のあえぎ声のようなものが聞こえて来ました。私は、急に冷水をぶっかけられたような気持ちになりました。
本当に、しているんだ……。