その部屋に住もうと決めたのは、都心の駅から近く家賃が安かったからだった。
今年の春に三年目の大学生活を迎えた彼女は、昨年まで親の仕送りに頼って生活していた。
しかし、前回帰郷した際に進路のことで、両親と折合いが悪くなり仕送りを止められてしまったのだ。
仕送りを止めればすぐに反省して謝るだろうと両親はタカをくくっていたが、娘は自立の道を選んだ。
二年間住んだ部屋は気に入っていたけれど、仕送りなしで住めるほど安くない家賃。
引越しすることを決めると、女子大生の娘は、すぐにバイトを始めた。
地方都市で良家の箱入り娘として育ってきたため、自立して生活することに憧れを抱いていた。
多少、世事に疎いところはあるけれど、非常に聡明で賢い娘だった。
不動産屋を回っていた娘は、駅から近く他の物件と比較しても格安な賃貸マンションを見つけた。
あまり安いので付近の住人達にそれとなく聞き込みをしてみたが事件が起きた形跡もなかった。
そうして一通りの疑念を払拭した娘は、真新しい雰囲気のワンルームマンションに入居を決めた。
必須科目の殆どは二年生の時に履修済みだった。
今は僅かな必須科目と幾つかの選択科目があるだけ。
ゼミを含め大学へ行くのが週に半分程度の娘にとって、バイトをすることに何も支障はなかった。
両親の束縛を離れてのびのびと生活を始めた娘の部屋に、ある日小包が届けられた。
貧相な茶色い包装の中から現れたのは、何も描かれていない真っ黒い縦長の箱だった。
好奇心に駆られた娘が箱のふたを開けると、陰茎を模した紫色の電動バイブが入っていた。
透明なビニールに包まれ密封された電動バイブ。
もちろん実物を見たのは初めてだった。
娘は何度も宛名を確認したが、間違いなく自分の名前と住所が書かれている。
…何のために、こんなイタズラを…誰かしら。と、娘は思案したが誰の顔も浮かばない。
それもその筈だった。
それは彼女の知り合いから送られたモノではなかった。
この部屋の本当の大家は、彼女が一度挨拶を交わした愛想のいい老人ではなかった。
実際の持ち主はチンピラくずれのゴロツキであり、老人は表の対応をする為に雇われていたのだ。
引っ越してきた彼女の部屋には、室内を覗き見するためのビデオカメラが幾つも隠されていた。
影の大家は、撮影したビデオを使い、インターネットで赤裸々な娘の私生活を配信していた。
無論、バイブを見つめて驚く娘の反応も、匿名の男たちの目前にさらされていた。
真っ白い肢体を無防備に曝す清楚な面差しの娘に、序々にアクセスが集まり始めた。
品の良い小さな顔立ち。
いかにも『お嬢さま』的な雰囲気は立ち居振る舞いからも分る。
平均的な身長でほっそりとした肢体。
染めている訳ではなく微かに茶色がかった髪は背中に届く長さ。
くびれたウェストと締まった尻の曲線が美しく、黒目がちな瞳と小さな口元が愛らしい。
娘にも微かな好奇心はあったものの、バイブを包むビニールの封は開けなかった。
部屋の片隅に仕舞われままになった箱。が、意外にも早く箱が開けられる日は訪れた。
ある日、影の大家に雇われた男が合鍵を使って娘の留守を狙って部屋に侵入した。
その男は、帰宅した娘がいつも飲むジュースに怪しげなクスリを混入して立ち去った。
男が持ってきたクスリは催淫作用のある媚薬。
娘を陥れる罠が大きく口を広げてゆく。
何も知らずにバイト先から帰宅した娘は、いつものようにジュースを飲みくつろいでいた。
だんだんと下腹部の火照り始めた娘の視線が、知らず知らず黒い箱を探していた。
…ちょっとだけ。そうよ…ちょっと触ってみるだけよ。…すぐにしまうから。
箱を開けビニールの封を切ると微かにゴムの匂いがした。
娘は先週、箱に同封されていた説明書を読んでいた。
簡単な用意を済ませて電源を入れる。
ヴぅ~ん…ヴぅヴヴ…ヴヴ…。
低いモーター音がして握った娘の手に振動が伝わってきた。
おそるおそる娘は部屋着の中へバイブを潜り込ませると股間付近にバイブの先端を押し当てた。
娘の手に宿った好奇心がバイブの先端を股間の中心へ向かわせていく。
「…ぁ。」
陰門周囲を移動させるうち敏感な場所を見つけてしまった。
白い肢体に快感がはしった。
独りで耽る淫猥な遊びに、娘は時間を忘れていた。
気が付いた時には夜も更けていた。
愛液がショーツにシミを作っていた。
潤んだ瞳をしたまま、ぼんやりと娘はそれを洗った。
白い顔を火照らせてバイブで遊ぶ娘は、翌週には部屋着を脱ぎ半裸になっていた。
下着を脱いだ股を大きく広げ陰門を広げるようにバイブの先端を這わせていく。
まるで誰かに犯されているような錯覚を感じて、妄想の中で娘は興奮した。
陰門の淵を廻り膨らんだ陰核を刺激した娘は、独りヨガって悶えた。
カメラの向こう側では匿名の男たちが彼女の痴態に股間を膨らませていた。
娘の淫らな姿を克明に映し出すため、影の大家に度々カメラの位置は変えられていた。
紫色のバイブが淡い桜色の陰唇に沈むのを匿名の男たちも待ち望んでいた。
すべてが影の大家の思惑通りになっていた。
理性の一部がバイブの挿入を拒んでいた。
超えられない一線を娘は守り続け、数週間が過ぎた。
更にアクセス制限が設けられた娘の部屋だったが、閲覧者が減ることはなかった。
娘の知らないところで、邪悪なテロップが流れ始めていた。
『処女のお嬢さまの白いカラダに一番乗りしませんか?可愛いオ○ンコにぶち込めるチャンス!絶対安全。』
彼女を目当てにオークションの申込みに殺到した匿名の男たちの欲望が露わになった。
やがて、権利を落札した数名の男たちの元へ、影の大家からメールが届けられた。
そのメールには、ツアーに参加するための集合場所と時間だけが記載されていた。。