「りか、好き、愛してる。すごく感じる。いってもいい?」
「いって。いっぱいいって。私もいきそう。ああ~幸せ最高にいい~あああああ」
貴子さんは幸せそうに横で眠ってる。きっと疲れてるんだろう。私はいろいろ考えた。私達はこれからどうすればいいんだろう?何が一番大切なのか?一番いい道は何なのか?本当の幸せとは?
「あら、起きてたの。早いわね。おはよう」
貴子さんが朝起きてきた。私はキッチンで朝ごはんの用意をしていた。
「おはよう。目が覚めちゃって。もうすぐ出来るから座って待ってて」
食卓でスクランブルエッグを食べながら私は切り出した。
「私ね、昨日考えたの。一生懸命考えたの。そして今朝答えが出たの。私達やっぱり別れましょう」
「えっ」
「私の一番大切なものは何か?それはやっぱり貴子さんだわ。そして貴子さんの本当の幸せは何か?やっぱりトップの女優であり続けること。そう思うの。そして私もやっぱり女優になりたい。これは私の夢。今までの名前だけの女優でなく本当のプロの女優、それを貴子さんから教えてもらった。考えてみたら私貴子さんに守られてるばっかりだった。でもそれじゃだめなの。それではいつまでたっても私貴女に向き合えない。そんな状態で続けていってもいつか壊れてしまう。だからといって、貴子さんが女優を辞められる訳ない。そんなことはもっと不幸になる。山口のことは一つのきっかけ。だから私は貴女と対等に立てる一流の女優になることにしたの」
「・・・そう、りかも随分女優になってきたのね。わかったわ。別れましょう。貴女がそこまで覚悟を決めて、決心したなら私は何も言うことないわ。私は貴女が這い上がってくるまでトップでい続ける。そして貴女が私と対等になれたなら、
その時お互い夫も、恋人もいなかったなら、その時はまた抱いてくれる?」
貴子さんの目には涙が溢れ今にも零れ落ちそうだった。私はというと、もう既に鼻水を垂らしながらボロボロに泣いていた。
私達は無言のまま泣きながら、しょっぱいスクランブルエッグを食べた。
私達は山口に一つ条件をだした。別れるけれどこの仕事が終わるまでは続けさせてほしい。でなければ作品に影響が出る。
と言って無理やりこの条件を飲ませた。私達は限られた時間の中で出会える日は毎日何時間でも愛し合った。こんなに濃密な時間は今までないというほど。そして刻一刻と終わりが近づいてきた。
つづく「女優 9」へ