『本当に、するつもりなの?』
嫁の美穂が、少しあきれたような顔で言う。
「ダ、ダメなの? 約束したじゃん!」
私は、慌ててそう言った。
『それはそうだけど、どうしてそんな事したいの? 違うか、させたいの?』嫁は、本当に理解出来ないという顔だ。私は、何度も説明した事をもう一度話した。
私は、昔から寝取られ願望がある。中学生の頃に見た青年コミックで、彼の目の前で他の男とエッチしてしまう話があった。ギャグ漫画風の作品だったけど、私は異常なほど興奮して、狂ったようにオナニーをした。それ以来、寝取られ性癖が芽生えてしまい、結婚をした今、さらにそれが強くなってしまった。
美穂の全てが知りたいので、他人に抱かせたい。愛しているからこそ、一度手放してみたい。美穂が、他の男の手でどうなってしまうのか見てみたい。その他、思いつく限りの言葉を並べた。
『でも、そう言うのって、思うだけで実行しないモノでしょ? あなただって、いざ実際にやってみたら後悔するんじゃない?』
美穂は、そんな風に言う。私が初めて彼女に寝取られ願望のことを話した時、美穂は怒りもしなかったし泣きもしなかった。意外に普通で、ただ驚いていた。それは、ドラマを観ている時だった。不倫モノの昼顔なドラマを一緒に観ている時に、それとなく打ち明けた。
『色々な性癖があるんだね。意外だったな』
美穂はそんな事を言うだけで、ヘンタイ扱いもしなかった。ある意味、度量が大きいというか、物事に動じない性格なんだなとあらためて感じだ。
美穂は、今年30歳になる。私の二つ下だ。でも、年下ではあるが、姉さん女房みたいな感じで私を尻に敷いている。
もともとソフトボール部のキャプテンをしていたので、人の上に立つのが上手いというか、姉さん女房的な性格だ。ただ、見た目は清楚系と言われることが多い。昔の写真を観ると、短髪で日に焼けて真っ黒だったが、今は肩まで伸びた黒髪が艶やかで、真っ白な肌をしている。
ソフトボールをしていたせいか、太もももお尻も筋肉質で大きめだが、腕もウェストも細い。そして、一番の特徴は、胸だと思っている。巨乳というわけではなく、Dカップあるかどうかだと思うが、とにかく美乳だと思う。ツンと上を向いているような張りのある感じで、乳輪も乳首も極小でピンク色だ。美穂も、胸には自信を持っているような感じだ。
私が、絶対に後悔しないし、これまで以上に大切にすると約束すると、
『ふ~ん。良いよ。でも、怒ったりしちゃダメだからね』
と、あっさりと言ってくれた。私は、異常にテンションが上がって、美穂に抱きついてキスをした。そして、興奮したまま彼女の服を脱がそうとすると、
『ダメだよ。しばらく禁止だよ。だって、そうしないと寝取られたって気持ちが弱くなっちゃうでしょ? せっかくなんだから我慢しなきゃ』
美穂はそんな風に言う。私は、興奮のやり場がなくなり切なくなるが、一理あると思って受け入れた。
『でも、本当に変わってるね。こんな事のために司法書士の資格取るなんて、逆にすごいね』
そんな風に、褒めてくれる嫁。私は、このために2年頑張って勉強して合格した。
2年前、私がしている不動産関係の仕事のキャリアアップに繋がるかな? と、思って司法書士の資格を取得しようかと考えた。でも、難関なので躊躇している時、嫁が合格したらご褒美をくれると言った。何でもしてあげると言った。それで頑張れた。
そんな風に、とりあえず実行出来ると言うことになったので、誰に頼むかという選定作業が始まった。私は、まさか今年合格出来るとは思っていなかったので、何も考えていなかった。逆に、嫁から提案があった。
知り合いはイヤだから、ネットで募集しようという提案だ。実際に、このサイトが良いんじゃないかという事まで言って来た。こんな事まで調べていて、もしかして乗り気なのかな? と、思ってしまった。他の男とセックスをしてみたい……。そう思っているとすれば、私にとってはとても興奮する状況だ。
私は、つい乗り気なのかと聞いてしまった。
『そんなわけないでしょ。でも、あなたに任せたら、あなたの友達とかを連れてきちゃいそうで危なっかしいから』
嫁はそんな風に言う。さすがに、私のことをよくわかっているなと思った。実際、私は今、会社の同僚や大学時代の後輩などの顔が浮かんでいた。確かに、知り合いとそんな事をしてしまったら色々と危ないことになりそうだ。
私は、さっそくその掲示板で単独男性を募集した。すると、1時間もしないうちにメッセージが複数来た。
『えっ? こんなの送ってくるんだ……。なんか、ちょっと怖いね』
嫁は、添付されたペニスの写真を見てボソッと言った。確かに、送られてくるメッセージは、顔写真を添付されているモノよりも、ペニスの写真を添付されたモノの方が多かった。そして、そんな写真を添付してくるくらいなので、皆一様に巨根自慢ばかりだった。私は、願望の中では、巨根の男性に嫁を狂わせて欲しいというモノもあったので、この時点でドキドキと興奮してしまっていた。
私は、巨根に興味あるのか聞いてみた。
『別にないよ。なんか、痛そうでちょっとイヤかな』
嫁はそんな風に答える。でも、さっきから画面を見つめたままだ。私は、最初からいきなり巨根男性は怖いなと思っていたので、ペニスの写真なしでメッセージを送ってきたサラリーマンの男性に絞ってメッセージを返した。その人は、29歳と年代も近く、文章から真面目なイメージを感じた。
そして、メッセージを何度かやりとして、土曜日に3人で面談することにした。その日は、あくまで面談だけということにした。さすがに、いきなりはちょっと怖いし、まだどんな人なのかもわからないので、心の準備が追いつかない。
『本当に約束しちゃったね。良いの? 後悔はしない?』
嫁は、責めるような口調でもなく、少し不安そうな口調だった。あまり物事に動じない彼女にしては、珍しいと感じた。そして同時に、嫁にそれだけ大変なことをさせようとしているんだなと感じた。でも、どうしても試さずにはいられない気持ちだ……。
その夜、寝ようとしていると、いきなりペニスを掴まれた。
『やっぱり大きくなってる。想像して興奮してる?』
嫁は、イタズラっぽく言う。私は、正直に想像して興奮していると告げた。
『自分の女房を他人に抱かせて興奮するなんて、ヘンタイ貴族みたいだね』
嫁は、独特の例えをする。でも、ソドムとゴモラではないが、なるほどと思った。
『ねぇ、もしも私がその人のこと好きになっちゃったら、どうするの?』
私のペニスを握ったまま、嫁が質問する。私は、その言葉にかなり動揺してしまった。そして、それを想像した。身体を奪われた上に、心まで奪われてしまう……。それは、想像しただけで激しく嫉妬心が湧いてしまう。でも、恐ろしいほど興奮もしてしまった。
『ふふ。答えなくても、これが答えてるよ。こんなに固くなったの、初めてじゃない? なんか、握ってるだけで出ちゃいそうだね』
嫁は、からかう口調だ。でも、私は実際に射精感がわき上がっていた。すると、ぱっと手を離す嫁。
『じゃあ、おやすみなさ~い。良い夢見てね』
そんな風に言うと、嫁は背を向けてしまった。私は、興奮しきっていたので、そのままセックスをしたいと思った。でも、さっきの嫁の言葉を思い出し、悶々としたまま目を閉じた。
そして、あっという間に土曜日は来てしまった。期待と不安、心配や葛藤、色々な感情が混じって落ち着かない気持ちだ。でも、嫁はいつも通りの感じだ。ニコニコしていると言っても良いくらいの落ち着きぶりだ。こういう時、女性の方が肝が据わっているんだなとあらためて感じた。
約束の場所は、都心のシティホテルだ。わざわざ、ジュニアスイートの部屋を取ってくれたようだ。チェックインが15:00からなので、15:30に尋ねることになっている。
「大丈夫? イヤじゃない?」
私は、車を走らせながら質問する。
『大丈夫じゃないのは、あなたの方じゃない? 今日はやめる?』
余裕のある口調で言う嫁。私は、少しムキになってしまったこともあるが、平気だと答えた。
『ふ~ん。顔色悪いけど、本当に平気なの?』
嫁は、心配そうに言う。私は、大丈夫と答えて運転を続けた。そして、ホテルの駐車場に車を停め、聞いていた部屋を訪ねた。ドキドキしすぎて無口になっている私と、鼻歌交じりの嫁……。今日はただの面談で、プレイをするわけでもないのに、我ながら情けないと思う。
「初めまして。今日は、わざわざ訪ねて頂いてありがとうございます」
出迎えてくれた男性は、写真で見るよりも誠実そうで男前に見えた。
『始めまして。よろしくお願いします』
嫁は、特に緊張しているような感じもなく、普通に挨拶をする。そして、部屋に招き入れられ、ソファに座った。なかなかの広さの部屋で、1泊いくら位するのかな? と、余計なことを考えてしまった。
そして、自己紹介が始まる。彼は35歳の独身で、外資系の金融関係の仕事をしているそうだ。なんとなく、エリートで稼ぎが良いのかな? と、感じてしまう。マサルと呼んでくださいと言われた。
「それにしても、本当にお綺麗ですね。緊張しちゃいます」
嫁に、そんな事を言う彼。でも、言い慣れた感じではなく、少し照れ臭そうに言う。そのはにかんだような表情を見て、好感を持ってしまった。
『全然そんなことないですよ。もういい歳したおばちゃんですもの』
嫁は、そんな風に言いながらもわかりやすく嬉しそうだ。主婦をしていると、普段なかなか褒められることもないと思うので、きっと本当に嬉しいのだと思う。
そして、嫁もマサルさんの事をイケメンですねと褒める。すると、彼は顔を赤くしてそんなことないですと否定する。仕草や表情が、いちいち可愛らしい感じがする。
ほとんど同年代なのに、なんとなく少年のような印象を持ってしまった。そして、嫁もたぶん好感を持っている様子だ。
『こういう事って、良くするんですか?』
嫁が質問する。
「いえ、今回で2回目です」
マサルさんが答える。表情から、ウソではない感じがする。すると、嫁が好奇心いっぱいの顔で、1回目はどうだったのかと質問した。
「は、はい。無我夢中であっという間に終わっちゃいました。あまり満足させられなかったと思います」
正直に答える彼。嫁は、そもそもなんでこんな事をしているのか聞いた。すると、彼は自分にも寝取られ願望があると言った。でも、今の彼女にそれを打ち明けられなくて、どうすればプレイに持って行けるか研究するために寝取り側をしていると答えた。そして、嫁にどういう経緯でプレイに同意したのか、逆に質問してきた。
嫁は、素直に答える。
「へぇ、なるほど。ご褒美にって事ですか。でも、御主人もそれを言う時、すごく緊張したんじゃないですか?」
私にも聞いてくる彼。私は、離婚も覚悟してそれを話したと言った。
「そうですよね。でも、奥様もよく同意しましたね」
『うん。だって、すごく頑張ってたから。それに、なんでもしてあげると言ったのは私だしね』
嫁は、そんな風に言う。そして、
『でも、マサルさんみたいな人で安心しました。怖い人や不潔な人だったらどうしようって思ってたから』
と、褒めるようなことを言う。そんな風に、自己紹介は続く。私は、マサルさんの人物像には安心していた。正直、出会い系の掲示板に書き込んでくる男など、まともな人間ではないと決めつけていた。でも、少なくとも今のところの印象は、かなり良い。
私は、思わず言ってしまった。今日、これからプレイをしないかと……。
「えっ!? い、今からですか?」
慌てる彼。でも、嫁は、
『私は別にいいよ。そう言うと思ってたし』
と、少しニヤけたような雰囲気で言う。
「ありがとうございます。嬉しいです!」
マサルさんは、良い笑顔で言う。そして、まずは嫁がシャワーを浴びに行く。私は、彼と二人になって気まずかったが、プレイのルールの確認を始めた。
・コンドームを装着する
・キスは禁止
・嫁が嫌がるそぶりがあったら、即中止
ルールと言っても、その程度だ。さすがに、全部OKというわけにはいかない。彼は、了解しましたと言った。そして、
「本当に良いんですか? あんなに綺麗な奥さん、僕なんかに抱かせちゃって後悔しませんか?」